神奈川県の最低賃金が今いくらなのかは、雇う側にも働く側にも直接響く重要情報です。2025年10月4日からは最低賃金が改定され、時給は1,225円となりました。
前回改定から63円引き上げられており、求人時給や給与計算の見直しが欠かせません。
適用開始日や対象者の範囲、計算時に含めない賃金の種類、月給や歩合給の時給換算の考え方まで正しく押さえることで、思わぬ最低賃金割れや法令違反を防げます。
本記事では、2025年10月以降の最新ルールを前提に、実務で迷いやすいポイントを具体例と表で整理し、今日からのチェックと改善にそのまま使える形で解説します。
神奈川の最低賃金は今いくらなのか2025年改定の結論
結論として、2025年10月4日以降に適用される神奈川県の地域別最低賃金は、時間額1,225円です。
この最低賃金は、県内の事業場で働く労働者に原則適用され、正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員・派遣労働者も対象になります。
ここではまず金額と適用の基本を押さえ、手当の扱いや時給換算といった実務上の注意点は、次の見出しで順番に確認していきましょう。
神奈川県の最低賃金は全国2位!東京都との差はわずか1円
令和7年度(2025年度)の地域別最低賃金は、東京都が時間額1,226円、神奈川県が1,225円で、神奈川県は全国で2番目に高い水準です。
東京都との差はわずか1円なので、「東京に近い水準で賃金設定が求められる地域」として把握しておくと実務判断がぶれにくくなります。
| 順位 | 都道府県 | 時間額(時給) | 適用開始日(発効日) |
|---|---|---|---|
| 1位 | 東京都 | 1,226円 | 2025年10月3日 |
| 2位 | 神奈川県 | 1,225円 | 2025年10月4日 |
| 3位 | 大阪府 | 1,177円 | 2025年10月16日 |
| 4位 | 京都府 | 1,122円 | 2025年11月21日 |
| 5位 | 埼玉県 | 1,141円 | 2025年11月1日 |
なお、最低賃金は「都道府県内で働く労働者」に原則適用され、派遣の場合は派遣先所在地の最低賃金が基準になります。
時給設定や月給の時給換算を行うときは、次の見出しで解説する“比較に含めない手当”の扱いも合わせて確認してください。
2025年10月4日からの最低賃金額
神奈川の最低賃金は今、1時間あたり1,225円です。適用は2025年10月4日の労働からで、2025年10月3日までの労働分は1時間あたり1,162円が基準でした。
金額は「支払う形」ではなく「働いた時間」に対して適用される点が大切です。たとえばシフトが日をまたいだ場合は、その労働が属する日付でどの額が適用かを確認します。
なお、個別の就業規則や労使協定で独自の社内最低賃金を定めていても、県の額を下回る定めは無効になります。改定期に合わせて古い就業規則や賃金規程が残っていないか必ず見直しましょう。
最低賃金の対象になる人・適用される働き方
地域別の最低賃金は、神奈川県内の事業場で働く常用・臨時・パート・アルバイト・嘱託など、名称にかかわらず原則すべての労働者と使用者に適用されます。
| 区分 | 最低賃金 | ポイント |
|---|---|---|
| 正社員・契約社員・パート・アルバイト | 原則対象 | 雇用形態や呼び方に関係なく、県内の事業場で働けば基準の対象 |
| 派遣(派遣社員) | 原則対象 | 派遣先の所在地の地域別最低賃金が基準 |
| 外国人留学生のアルバイト | 原則対象 | 労働者として働く実態があれば、国籍に関係なく最低賃金が適用 |
| 家族従業員(家族に給与を払うケース) | 実態により対象 | 指揮命令下で働き賃金を受け取るなど「労働者性」があれば対象 |
| 歩合給・出来高払い | 原則対象 | 実労働時間で割り戻した時給換算が基準未満なら不足分の支払いが必要 |
派遣の場合は、派遣先の所在地の地域別最低賃金が基準です。外国人留学生のアルバイトや家族従業員の給与も、労働者としての実態があれば同様に基準を満たす必要があります。
歩合や出来高払いでも、実労働時間で割り戻した時間当たり額が基準を下回れば不足分の支払いが必要です。
インターンや研修名目でも、指揮命令下で労務提供があれば最低賃金の対象になり得ます。
最低賃金の計算に含まれない賃金・手当の一覧
最低賃金を上回っているかの判定では、賃金のうち比較から除外される項目があります。
除外されるものを知らずに「総支給は超えているから大丈夫」と判断すると、未払いの原因になります。次の代表例を必ず切り分けて計算しましょう。
| 最低賃金に含めないもの | 例 |
|---|---|
| 手当(条件付き・目的付き) | 精勤手当・皆勤手当・通勤手当・家族手当 |
| 臨時に支払う賃金 | 結婚祝金などの一時金 |
| 1か月を超える期間ごとの賃金 | 賞与(ボーナス)など |
| 割増賃金の割増部分 | 時間外・休日・深夜の割増分 |
上記は最低賃金との比較に算入できません。基本給や職務手当など「通常の労働に対して毎時間あたり発生する部分」で基準を満たしているか確認します。
歩合給や出来高払いは、当該期間の実労働時間で割り戻した金額で比較し、不足があれば差額調整を行います。
月給・日給・歩合給の時給換算の考え方
月給制や日給制、歩合給の場合は、実労働時間で割り戻して時間当たりの賃金を算定し、神奈川の最低賃金の今の額と比較します。
除外項目を外したうえで、所定内賃金を総実労働時間で割るのが原則です。次の例で考え方をイメージしてみましょう。
| 給与形態 | 前提 | 時間当たりの賃金 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 月給 | 基本給200,000円/所定160時間 | 1,250円 | 基準クリア |
| 月給 | 基本給180,000円/所定160時間 | 1,125円 | 不足(調整要) |
| 歩合 | 歩合部分180,000円/実労160時間 | 1,125円 | 不足(差額支給) |
| 日給 | 日給9,800円/1日8時間 | 1,225円 | 基準クリア |
実務では、固定残業代を導入している場合の除外や、所定時間と実労時間のズレの扱いなどで差が出ます。
固定残業代は適正な時間数と単価で設定されているか、所定内の基本給部分だけで最低賃金を満たすかを切り分けて検証しましょう。
最低賃金を確認する際の注意点と見落としやすいポイント
最低賃金は1時間あたりの下限であり、これを下回る合意は無効となります。違反時は差額の支払いに加え、是正指導の対象にもなります。
改定後に基本給の端数や加給の更新を失念しやすい時間帯勤務や短時間勤務は特に注意が必要です。派遣や請負の単価見直しは、元請けや派遣元・先との調整を早めに進めます。
求人表示や労働条件通知書、雇用契約書の記載額も最新額に合わせて更新し、応募段階の誤認を防ぎましょう。
神奈川の最低賃金改定ポイントを短時間で理解
今回の改定は過去の上げ幅と比べても大きく、企業の原価や家計の可処分所得に影響します。
実務では「いつから」「いくら上がったか」「直前の額はいくらか」を押さえて、支払額や見積単価に反映するのが第一歩です。
合わせて、賞与や通勤費ではなく、所定内賃金の見直しで基準を満たす設計が求められます。
今回の改定額と改定前との比較
2025年の神奈川の最低賃金は、前年から63円の引上げとなりました。上昇率は約5.4%で、インフレや人手不足を背景に近年で大きい部類の改定です。
引上げにより、時給水準の下限が1,225円となるため、これまでギリギリで設定していた店舗や事業所は基本給や職務手当の再設計が必要です。
とくにフロア全体を一律改定するか、役割や等級で差をつけるかは、内部公平性と採用競争力のバランスを見て判断します。
最低賃金の改定スケジュールと適用開始日
改定の発効日は毎年秋に設定されるのが通例で、2025年は10月上旬の発効でした。
直前の官報公示日と、旧額が適用される最終日も把握しておくと、月跨ぎの賃金計算や見積基準日の説明がスムーズです。以下に今回の主要日付と金額の対応を一覧で示します。
| 項目 | 日付・金額 |
|---|---|
| 官報公示日 | 2025年9月4日 |
| 発効日 | 2025年10月4日 |
| 改定後の額 | 1,225円/時間 |
| 改定前の額 | 1,162円/時間(~2025年10月3日) |
なお、発効日前の労働に遡って新額を適用する必要はありませんが、求人広告や募集時の提示額は、発効後の勤務開始者にあわせて早めに更新しておきましょう。
最低賃金が引き上げられた背景と理由
今回の改定幅は、物価動向と賃上げの動き、国の目安に基づく地方審議会の審議結果が重なって決まりました。
人手不足が続くサービス業では、最低賃金だけでなく実際の採用時給も相応に上がる傾向があります。
家計側では、光熱費や食品価格の上昇が続く中での可処分所得の底上げが狙いとされています。企業側には生産性向上や価格転嫁の取り組みも求められます。背景の要因は次の通りです。
- 物価上昇と実質所得低下への対処
- 人手不足と採用競争の激化
- 国の中長期的な最低賃金引上げ方針
- 地域間格差の是正と人材の定着
現場での最低賃金改定後の実務対応を手順で整理
最低賃金改定は、給与計算だけでなく求人、シフト設計、原価管理、契約書の更新まで幅広く影響します。
対応漏れは未払いのリスクを招くため、「誰が」「いつまでに」「何を直すか」をスケジュール化して管理しましょう。以下ではチェックリストと工程表で、今日からできる対策を示します。
自社・自分の賃金が最低賃金を満たしているか確認する方法
まずは自社の全労働者の時給相当額を最新の計算ルールで洗い出し、神奈川の最低賃金の今の額を下回るケースを特定します。
所定内賃金だけで判定しているか、除外項目を混在させていないかを重点的に確認します。
派遣や外注単価についても、契約上の改定条項や見直し期日をチェックし、関係先と早めに協議します。確認の観点は次の通りです。
- 所定内の基本給・職務手当の合計が基準を満たすか
- 固定残業代の設定が適正か(時間数・単価・明示)
- 歩合・出来高の割戻し計算が適切か
- 派遣・請負の単価、求人票の記載額が最新か
- 就業規則・賃金規程・雇用契約書の整合性があるか
最低賃金改定に伴う実務対応の手順とチェックリスト
改定の工程は、調査・設計・合意・周知・反映の順で進めると漏れが出にくくなります。とくに給与計算システムや勤怠の締め日運用により、発効月の反映タイミングが前後しがちです。
書面交付や電子交付での労働条件通知の更新、求人媒体の差し替えも同時並行で実施します。以下の工程表を参考に優先順位をつけましょう。
| 工程 | 主担当 | 期限の目安 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 現状調査 | 人事・現場責任者 | 即日~1週間 | 時給換算と除外項目の切り分け |
| 設計・改定案 | 人事・経理 | 1~2週間 | 基本給中心で基準クリアの設計 |
| 労使合意 | 人事・労組/従業員代表 | 2~3週間 | 不利益変更の有無に注意 |
| 周知・更新 | 人事・広報 | 発効前週まで | 雇用契約書・求人・就業規則の改訂 |
| 支給反映 | 経理・給与 | 発効月翌支給 | 締め日と勤務日の帰属に注意 |
小規模事業者は、同業の賃上げ動向も踏まえ、採用・定着の観点での賃金テーブル整備を進めましょう。等級や役割に応じた段階的な水準表を作ると、次回改定時の運用が楽になります。
最低賃金対応で使える助成金・支援制度
最低賃金引上げに伴い、生産性向上の投資や賃金表の底上げを支援する施策が用意されています。
設備更新や業務フローの見直し、IT導入などの計画とセットで賃金改定を行うと、コスト平準化と人材定着の双方に効果が出ます。
支給要件には「事業場規模」「賃金引上げ幅」「生産性指標」などの条件があるため、早めに最新要領を確認し、必要書類を整えましょう。
商工団体や社労士と連携し、採択率を高める設計を心掛けてください。
神奈川の最低賃金に関するよくある疑問を具体例で解消
ルール自体はシンプルでも、現場の運用では細かな疑問が生まれます。高校生のアルバイトや試用期間、残業や深夜の扱いなど、誤解の多いポイントをQ&A形式で整理します。
迷ったときに立ち返れる実務メモとして活用してください。
高校生・学生アルバイトにも最低賃金は適用される?
高校生や大学生のアルバイトにも地域別最低賃金は原則同じに適用されます。年齢を理由に基本給を最低賃金未満にすることはできません。
職場体験や短時間のスポット勤務でも、使用者の指揮命令下で労務を提供していれば最低賃金の対象です。
危険作業の制限など年少者に関する別の規制はありますが、最低賃金の金額自体が年齢で変わるわけではありません。求人票や店頭ポスターの表示も、最新額に合わせておきましょう。
試用期間中でも最低賃金は守る必要がある?
試用期間中であっても、原則として最低賃金を下回る賃金設定はできません。
能力や適性の見極めを理由に基本給を著しく低く設定するのではなく、評価制度やOJT設計で差をつけるのが適切です。
法律上は「減額の特例」制度がありますが、個別に行政の許可を要する厳格な手続きであり、広く自由に使えるものではありません。
現実的には、試用中も通常の賃金表で最低賃金以上を確保した上で、成果に応じた早期本採用や昇給で対応するのが安全です。実務運用の透明性を高め、トラブルを避けましょう。
- 試用でも最低賃金未満は不可
- 適用除外は原則なく、特例は許可制
- 育成は賃金より教育設計で担保
- 求人表示は試用中も最新額で明示
残業代や深夜手当の計算はどうなる?
最低賃金の比較からは、時間外・休日・深夜の割増部分は除外します。ただし、割増の基礎となる通常の時間当たり賃金が最低賃金以上であることが前提です。
残業単価は通常賃金に所定の割増率(時間外は25%以上、深夜は25%以上、休日は35%以上など)を掛けて算出します。以下は時間外労働の単価イメージです。
| 通常の時間当たり賃金 | 割増率 | 時間外単価 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 1,225円(最低賃金ぎりぎり) | 25% | 1,531円 | 基礎が基準内で適法 |
| 1,180円(最低賃金未満) | 25% | 1,475円 | 基礎が違反(通常賃金を是正) |
固定残業代を導入している場合は、固定部分とは別に通常賃金が最低賃金以上であること、固定残業時間を超えた分を追加で支払っていることを明確に運用してください。
神奈川県の最低賃金の要点をまとめて確認
神奈川の最低賃金は今、1時間1,225円で、2025年10月4日から適用されています。比較から除外される手当を外して、所定内賃金を実労働時間で割り戻した額で判定するのが基本です。
金額改定は秋口に発効するのが通例のため、毎年夏から準備を進め、求人や就業規則、賃金表、原価の見直しまで一体で対応するのが安全です。
今日のシフトから迷いなく運用できるよう、本記事の表とチェック項目を活用してください。

